回転式ティンパニ2010/09/01 18:30

 竹内将也です。
 今日はこのティンパニについてご紹介しようと思います。私が仙台フィルの演奏会で度々使用する楽器です。

 この楽器は半世紀前まで、現在のNHK交響楽団の前身である日本交響楽団で使用されていました。(当時のティンパニ奏者小森宗太郎氏)。後に倉庫に眠っていたこの楽器は、廃棄処分を免れるかたちで私の師、有賀誠門先生が払い受けました。私はこの貴重な楽器をお預かりし、管理をさせて頂いています。

 いつ頃製造されたかはわかっていませんが、ある文献によるとアムステルダムのミュージシャンで発明家のJohann Stumpff(1770-1841)が1815年頃にこのタイプで全く同じデザインのティンパニを作っていますから、古ければ200年近く前の楽器と推定されます。ヨーロッパにはまだ同種のものが点在しているものとみられ、アメリカの全米打楽器教会博物館にも展示されています。

 ティンパニは銅で出来たお椀状の胴体の口に仔牛の皮をのせ、その皮をネジで締めて張っています。

 ティンパニはどういうわけか音程(ドレミ~)をハッキリと聞き分けることができます。皮の張り具合を調節することで音程を変えることができます。作曲家が作品の中で指定した音程に調節し、奏者は曲の途中で音程を変えなければなりません。

 その調節をするのに、ネジを直接締めたり緩めたりする方法がもともとのティンパニ「手締め式ティンパニ」なのですが、そのネジを棒でつないで足下のペダルで一括操作できるようにしたのが現代のペダル式ティンパニです。このペダル式ティンパニの発明によって作曲家はティンパニの音程をしょっちゅう変えさせるようになりました。オーケストラ作品のサウンドに大きな歴史的変化を与えています。

 一方、この写真のティンパニは、ペダル式が発明されるまでの過渡期に作られた「回転式」というものです。
 何が回転するかといいますと、なんと胴体自体が回転します。本体を支える支柱はネジ山になっており、本体をネジのように回転させることで、皮を張ったり緩めたりするという、画期的な方式なのです。

 そしてこの楽器のもう一つの特徴は、独特のサウンドです。この楽器が持つ非常にハッキリした発音と豊かな音色は、現代のティンパニには決して真似が出来ません。

 仙台フィルでは、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューマンの作品などで使用することがありますので、聴いてみてください。

                       竹内将也

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